「断らない病院、面倒見の良い病院」(地域密着型多機能病院の確立)を作り上げる。

「断らない病院、面倒見の良い病院」へのシンカ(進化、深化)』が前年度からの病院目標です。「断らない病院、面倒見の良い病院」の標語を初めて、聞いたのは、二年前、日本慢性期学会会長の講演で、患者さん、住民の方、地域医療施設に対して「断らない、面倒見の良い病院」を目指さなければ、今後の「地域包括システム」「地域医療構想」という医療改革の荒波を乗り切れないであろうとのことでした。私も、感銘を受けて、直接、当院の体制(急性期、包括ケア・慢性期病棟を組み合わせた形態:地域密着型多機能病院体制)について、会長先生に話しに行きましたが、「しっかり実践されているのでありませんか、」と励ましていただきました。
 次に聴いたのは、医療研究会主催の「奈良県の地域医療構想取り組み事例」の研修会で、奈良県の担当者から、「地域医療構想」には、「断らない病院、面倒見の良い病院」で医療施設を振り分けていることが示されました。奈良県では、急性期病院には、「断らない病院」への機能強化、回復期・慢性期病院には「面倒見の良い病院」への機能強化を求めて地域医療機能を高め、高齢化時代に必要な病院像を示すことを目指していました。その上、2者の連携が欠かせないわけですが、地域に対する有効でフットワークの軽い医療を目指すとなると、当院の方向性は間違っていないような気がしました。当院の立ち位置としては、「面倒見の良い病院」に傾いた「断らない病院」の方向性に職員一丸となって 知慧を出し合う事が必要だと思います。
 この『 知慧』というのは、謙仁会初代理事長山元七次の3つの理念の内、「ベストを尽くせ」の説明文「謙仁会の家風」で述べていますが、知恵と書かずに、 知慧を出しあいなさいと書いています。患者さん、地域住民の方を中心に、 知慧を出し合って、全身全霊を使って医療介護を尽くしなさいと常に、前理事長は話していました。この言葉は、もともと仏教用語で、物事をありのままに把握し、真理を見極める認識力のことを言います。今後も、より良い医療環境作りとして、職員個人の力を高め、 知慧を出し合い、質の高い地域医療への提案を行い、勇気を持って前進、行動を行う(鹿児島弁:ひっ跳べ)事が重要であり、前年度からの努力目標と考えます。 

●山元記念病院 理念

地域住民に密着した病院として地域医療の向上と予防医療・福祉に貢献する。

●謙仁会 理念

一.患者さんは常に正しい。
一.頭を下げよ。
一.ベストを尽くせ。  


●患者さんの権利

医療に関して、患者さんは人間としての尊厳を大切にされ、以下の権利があります。
1.患者さんは、人格を尊重した適切な医療を受ける権利があります。
2.患者さんは、自由に病院、医療施設を選ぶ権利があります。
3.患者さんは、治療方法などを自ら選択・決定する権利があります。
4.患者さんは、自身の医療情報について説明を受ける権利があります。
5.患者さんは、個人情報を守られる権利があります。


●患者さんへのお願い

医療は患者さんと医療従事者が対等の立場で相互の信頼関係の上で行われます。そこで、患者さんは次のことをお守りください。
1.患者さんは、積極的に医療に参加する義務があります。
2.患者さんは、病院の規則を守る義務があります。
3.患者さんは、医療費を支払う義務があります。


●謙仁会の家風

4月1日を境として、謙仁会山元外科病院及び楽寿園老健施設の人事移動が例年の如く行われた。それによって多数の新人が就職して来た。「日に新たに、日々に新たに」と言う言葉があるが、人が入れ代わることは仕事場の活性化に役立ち良いことだと思っている。新風を送り込むという意味で期待が大きい。
 
特に謙仁会の職員は看護学校や准看学校に入学する者、或は栄養士.X腺技師その他新たに准看や正看の免許を取得した者、介護職員など様々である。病院、老健施設を合わせると、医師職員を含めて職員の数は二百数十人の大世帯になって来た。そこで新しい人たちの新風は有難いことであるが、一方山元外科病院、老健施設には伝統という家風がある。これは山元外科病院が創設されてから、堂々として今日まで40年間試行模索し乍ら自然と出来上がって来た家訓とも言うべきもので、この大原則は守って欲しいし、新風によって更に発展させて欲しいと思っている。
 
この大原則とは「患者さんは常に正しい。頭を下げよ。ベストを尽くせ」と言う標語である。
 
「患者さんは常に正しい」
患者さんは身体の病、心の病、悩みと痛みがあるため病院や施設に救いを求めて来られている。不安で一杯である。それ故に医者や看護婦(士)の一寸した言葉、一寸した動作、笑顔のあるまなざし、その他患者のための熱心な医療への探究心などの有るや無しやを大変気にし、一喜一憂しておられる。深夜の廊下の灯を一睡も出来ずに見つめて、心の悩み・将来のこと・職場のこと・家族のこと等を思い続けている患者さんも居るであろう。
 
「頭を下げよ」
患者さんの尊厳に対し頭を下げることであって、おじいさん、おばあさんと弱者呼ばわりしてはならない。はっきりお名前を呼ぶことである。又、患者さんには勿論、心配して来た家族や患者への慰問の人にも頭を下げ声をかけてあげることも良いことだ。
 
「ベストを尽くせ」
己の持てるだけの力と温かい心と智慧を一杯出し切って奉仕せよということである。以上が山元外科病院の家訓であって、要するに患者さんの事を第一で考え、自分のことは後から第二番目に考えることである。修業僧みたいなことだと思うかも知れないが、私はそうやって来た。具合の悪い人の病床には足繁く夜中でも何回でも訪問して来た。それでも己の智慧の足りなかった事に幾晩ももがき眠れぬこともあった。常に自分の心は患者の家族と共にあった。

さて、名医と言われる人が居た。それは握手して廻り、患者さんと話を交わすだけで特に才たけた人ではなかったという。又、最近読んだ本には、名医に共通したことは、患者さんにさわる、話をよく聞いてやる、そして患者さんを誉めるという三点であった。この話は単に医者だけではなく看護婦も又、介護人さんにも同じく心掛けることだと思う。よく説明してくれる医者が良い医者だという人もあるがインフォームド・コンセントと今は英語になっているが古来から日本にその美風はあった。これらの家風は新入社員のみならず外来の事務員も検査、薬局、リハビリ、X線室、給食室、訪問看護、支援センター、ホームヘルパーすべての医業にたずさわる者も新めて心掛けるべきことだと思っている。私共は聖職者であり、普通の労働者とは違うのだと誇りを持とう。

故 初代理事長 山元七次